第36章

霧生嵐は伏し目がちに神代雪璃を見下ろしていたが、やがてワインボトルを手に取ると、グラスに液体を注ぎ足し、彼女へと差し出した。

深紅の液体がクリスタルグラスの中で揺らめく。

神代雪璃は唇を引き結び、そのグラスを受け取ると、一瞬の躊躇もなく一息に飲み干した。

「美女は酒豪ときたもんだ!」

誰かが手を叩いて囃し立て、下品な笑い声が上がる。

「さあさあ、もう一杯!」

高価な赤ワインがグラスの壁を伝って注がれ、芳醇な香りが個室に充満する。空になったばかりのグラスは、瞬く間にまた満たされた。

神代雪璃はグラスを手に、横目で霧生嵐を見た。

彼はソファに深々と座り、その端正な顔立ちは影に覆わ...

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