第37章

「い、いえ……何でもありません」

田中は未練たらたらに霧生嵐を見送ったが、彼から物をねだる度胸などあるはずもなかった。

「夜も遅いですから、お気をつけて」

霧生嵐は無言で小さく頷くと、田中の断腸の思いが滲む視線を背に、ネックレスを懐にしまって踵を返した。

「あの神代雪璃め、余計な真似を!」

田中の眼底に凶暴な光が走る。

今度会ったら、ただでは済まさない。たっぷりとしごいてやる。

霧生嵐は店を出ると、そのまま支配人室へと向かった。

「お疲れ様です、霧生社長」

紡木祈に最近の仕入れ状況を報告していた部下が、彼の入室に気づいて慌てて腰を折った。

霧生嵐は「ああ」と短く応じ、手を...

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