第44章

神代雪璃はそれを受け取らなかった。

伯母がここに来ることを許してくれた、それだけで彼女は十分満足だったのだ。

三年前の入獄の一件は、この社交界隈では周知の事実となっている。自分が宴会場に姿を現せば、伯母の顔に泥を塗ることになるだけだ。

霧生夫人は彼女の手を取り、咎めるように、しかし愛情を込めて言った。

「今日は私の誕生日なのよ? 実の母親を一目見て帰るだなんて、そんなの水臭いじゃない」

「でも、私の立場では……」

神代雪璃は乾いた唇を舐めた。惨めさがこみ上げ、言葉が続かない。

「立場って何のこと?」

霧生夫人は笑って彼女の言葉を遮った。

「あなたは私のお気に入りの後輩じゃな...

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