第100章

汐見奈緒と一緒に会社を出たとき、少し離れた場所に停まっているスポーツカーが目に入った。車の脇には、黒いカジュアルを着た榎本槙野が斜めに寄りかかっている。口には煙草。私たちが出てきたのを見るなり、吸い殻を地面に放り投げた。

汐見奈緒が肘で私の腕をつつく。

「なつちゃん、見て。あのスポーツカーの横でキメてる男、こっち見てない? 知り合い?」

――言ってほしくないことを、あっさり言う。

榎本槙野は陰気で冷たいだけじゃない。妙に面倒くさいところがある。

しかも奈緒の声は、別に小さくない。

聞こえたかどうかはわからない。でも、彼のきゅっと結ばれた口元がぴくりと震え、こちらを見る目がさらに冷...

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