第103章

 私は黙って彼を見つめた。

「あなたが組みたい相手は、私じゃないはずです。私は戻ってきた以上、もう二度と出ていくつもりはありません。……人違いじゃないですか」

 楠田尚敬が、老獪な笑みを深める。

「賢いね。君が本当に何もしたくないって言うなら――榎本社長を紹介してくれればそれでいい」

 私は可笑しくなって、軽く息を漏らした。

「楠田社長。私が誰か知ってるなら、私がどうして東南アジアへ行ったのかも知ってますよね? 山村恵太と上原明はあなたの人間。厳密に言えば、私を売ったのはあなたです。……それで、私があなたを助けると思います?」

「助けるさ」

 楠田尚敬は確信に満ちたまま、にやり...

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