第104章

白坂敬人の目には、どうしようもない無力さと怯えが浮かんでいた。――この先に何が待っているのか、彼は知っている。

私は笑顔のまま自分のハンドバッグを手に取り、私を呼び出した浅村尾木へ振り返った。

「浅村さん。今日、敬人は私のものって言いましたよね。だったら、この人も一緒に連れて行っていいですか」

浅村尾木は冗談めかして肩をすくめる。

「さすが敬人、モテるなあ。でも……さっき小野寺社長が迎えに来るって言ってたろ? そこに敬人連れてくのは、ちょっとまずいんじゃないか?」

意味ありげに白坂敬人へ視線を投げる。――私が納得できる理由を口にするのを待っている。

「次にしとけよ」

不意に楠田...

ログインして続きを読む