第110章

夏川清美の名前が出た瞬間、手がふっと止まった。確かに――あの女が出てきて十日あまり。妙なほど静かだ。

氷上雅子がちらりと私を見て、またため息をつく。

「結局ね、これ全部、允樹のせいなのよ。そもそも允樹と夏川清美が関わること自体、間違ってた。両家の関係があるからって、あっちが勝手に寄ってきても強く言いづらかったし……それで、あなたも知ってるでしょ、あの件まで起きて。もし允樹とあの子が曖昧だなんて噂が広まったら、周りがうちをどう見るか……」

彼女の言い分に、私は何も返さなかった。

夏川清美がどれだけ擦り寄ろうと、受け止めるかどうかは小野寺允樹次第だ。

私が黙っていると、氷上雅子は苦笑し...

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