第113章

 車が邸宅の門前に滑り込むと、榎本槙野が遠巻きに車のそばへ立っているのが見えた。いつもの決めた格好。車のフロントに斜めにもたれ、俯いたまま煙草をくゆらせている。

 小野寺礼臣はその姿を見て、思わず口を挟んだ。

「社長って、いつもそんなふうにキメてんのか?」

 目に見えて、車の脇に立つ榎本槙野の体がぴくりと固まる。こちらを向いた視線が、一段と鋭くなった。

 私は慌てて小野寺礼臣の袖を引き、小声で釘を刺す。

「声、抑えて」

 汐見奈緒とそっくりだ。余計な一言が、いちいち刺さるところまで。

「戻ったか。何かわかった?」

 榎本槙野は吸い殻を地面に落として踏み消し、こちらへ歩いてくる...

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