第146章

小野寺允樹は――たぶん、もう私の正体に気づいている。そんな予感があった。

小野寺のおじいさんがかつて暮らしていた別荘へ戻ると、全員の視線が一斉に小野寺允樹へ集まった。遠藤真莉は焦りを隠せない声で詰め寄る。

「東南アジアで夏川葉月に会ったっていうの? あの子、今どうしてるの? 会社のお金を動かしたことなんて、もうこっちは気にしないって伝えて。戻ってきてくれさえすればいいのよ」

小野寺允樹は、遠くから私を一瞥した。重たい声で言う。

「……もう戻ってきてる」

遠藤真莉が身を乗り出す。

「じゃあ今どこにいるの? ほらね、やっぱり死んでないじゃない。葉夏って、命だけはやたら強いんだから。そ...

ログインして続きを読む