第16章

夏川清美の一言が、場の空気を一気にざわつかせた。氷上雅子の目には、隠しきれない興奮の光が走る。

「清美、どういう意味? あなた、その人を知ってるの?」

夏川清美は私を指差し、迷いなく頷いた。

「見たことある。二年前、允樹兄さんと東南アジアにいたとき、この女を見たの。男を何人も引き連れてて……允樹兄さんの手を殴って骨折させたのも、こいつよ。今でも雨の日は疼くんだから」

周囲から「え……」と小さなどよめきが漏れる中、私は薄く笑って夏川清美を見返した。

「何の話? そんなこと、私には心当たりがないわ」

夏川清美は眉を寄せ、露骨な嫌悪を瞳に浮かべる。

「まだしらばっくれるの? 背中の感...

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