第42章

車内では、私と小野寺礼臣のどちらも口を開かなかった。耳元でゆるやかに流れるカーステレオの音だけが、空気の気まずさをどうにか薄めてくれている。

窓を少しだけ開け、私は顎を上げて、その隙間から吹き込む冷たい風を頬に当てた。くらくらする頭を冷ますため。吐く息に混じる酒の匂いまで、どこかへ飛ばしたくて。

「その……」

結局、私のほうが耐えきれなくなって口を挟んだ。

「パーティーのあと、大塚さんの娘さんと、何人かの奥さまたちに誘われて個室でちょっと話しただけ。座ってたのも三十分もないよ。すぐ出てきたし、敬人も早く戻りたがってたから、みんなに言ってたの。私を家まで送るって……」

――何を必死に...

ログインして続きを読む