第56章

私はぶんぶんと首を振って病室を出た。スマホを手に取ってようやく気づく。小野寺おじいさんからの着信、何本も全部スルーしていた。

先にメッセージを返してから病室へ戻ると、小野寺礼臣はもう着替えを済ませ、病床の上にきちんと座っていた。

「もう行ける?」

なんだか、さっきまでとどこか違う。うまく言えないけれど。私は近づいて、彼の手から上着を受け取ろうとする。

「うん、行けるよ。上着は私が持つ。自分で歩ける? 支える?」

その瞬間、礼臣は感電したみたいにすっと身を引いた。

「要らない。自分で持つ」

……なんでそこまで警戒するの。上着だって高級ブランドでもないのに、誰が盗むっていうの。

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