第58章

頭の中は真っ白で、まともに考えることなんてできなかった。自分の手を離すことすら、目の前のこのセクハラ男を突き飛ばすことすら忘れてしまう。冷たい水の中にいるのに、身体だけがじわじわと熱を帯びていく。

私の腰を抱く彼の手は、いつの間にか背中を這うようにさまよっていた。喉の奥からは心地よさそうな吐息が漏れ、さっきまであんなに性急だった口づけも、少しずつゆるやかになっていく。その手が私の上着の裾をめくり、ゆっくり中へ入り込もうとしたところで――

この変態……!

私はためらわず、彼の唇にがぶりとかみついた。手を離すと同時に、頬へ思いきり平手打ちを食らわせる。そのまま浴槽の縁をつかみ、水の浮力を借...

ログインして続きを読む