第73章

「隣の部屋、ちょっと騒がしいね。個室、変えようか?」

小野寺允樹は、向こうの通話内容をさほど気にしていないようだったから、私はさりげなく促した。

その一言で、允樹はようやく耳を澄ませる。

「あと5分やる。それでも来ないなら、前に取引した内容をバラす。夏川さん――自分の実の姉を陥れたのが自分だって、他人に知られたいわけじゃないだろ?」

「黙れ。2000万、1円もまからない」

小野寺允樹が、わずかに眉を寄せた。

夏川さん。2000万。

彼は訝しげに私を見る。私も同じように、とぼけた顔を作って声を落とした。

「……隣、なんかヤバい取引してない?」

その二言だけで十分だった。允樹の...

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