第81章

小野寺允樹が病室に入ってくるなり、複雑な表情でこちらを見た。

「さっき、祖父が言ってたことなんだけど……」

私は顔だけ向け、氷みたいな目で返す。

「夏川清美の代わりに謝りに来たなら、必要ないわ。礼臣がこんな怪我をしてるのに、私はどんな謝罪も受け入れない。ほかのことも、今は何も話したくない」

小野寺允樹は、その程度で怯む男じゃなかった。

「さっき祖父が言ってた。……君、葉月なのか?」

私は冷たく笑う。

「妄想癖でもあるの?」

ベッド脇の椅子に座っていた小野寺のおじいさんが、私の代わりに口を挟んだ。

「聞き間違いだろう。私はね、東南アジアでの葉月の様子を聞いただけだ。もし向こう...

ログインして続きを読む