第84章

小野寺礼臣を介護士に引き渡し、注意点をいくつか細かく伝えたあと、私はそのまま車を走らせて夏川グループの加工工場へ向かった。

事務所は相変わらず移転していない。工場の片隅へ移すはずだったはずが、今もなお、現場とつながる出入口のところに鎮座したまま。

時間がなくて間に合わなかったのか。それとも、わざと先延ばしにしているのか。

どちらでもいい。

今日を境に、あの男に「決める権利」なんて残らないのだから。

私が事務所に足を踏み入れると、役員たちは顔を見合わせ、状況が飲み込めない様子でざわついていた。

「なんで急に取締役会なんだ? 会社に何か重大な決議でもあるのか?」

「さあな。今の会社...

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