第87章

夏川文雄は、私の予想よりほんの少し早く、病院の病室まで押しかけてきた。

私が株主総会を開いたあの日、夏川清美の件は大したことじゃないとでも思っていたのか、顔も出さなかったくせに。こういう時だけ動きが早い。

「葉夏さん……少し、ちゃんと話せませんか」

できるだけ品よく取り繕ってはいる。けれど目元の笑みは薄っぺらく、まるで届いていない。

私は、いまにも眠りそうだった小野寺礼臣に視線を落とし、わずかに眉をひそめた。

「いまは休憩時間です。病人の付き添いもしています。用があるなら、明日会社で」

夏川文雄は、なおも作り笑いを崩さない。

「でも昨日も会社にいらっしゃらなかった。葉夏さんは本...

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