第91章

小野寺允樹は、長いこと黙り込んでいた。けれど私には、彼に付き合っている暇なんてない。

そもそも私は、彼と多少なりとも関わりを作るつもりだった。わざと引っかけて、こちらに惚れさせて、夏川清美との間に火種を落とす――そんな算段。

なのに火種どころか、夏川清美のほうが先に自分から檻に入っていった。今さら小野寺允樹を口説く気なんて、欠片もない。私が考えているのは、小野寺礼臣をきちんと看病して、身体の傷を早く治させて、静かに暮らせるようにすることだけだった。

背を向けて立ち去ろうとした、そのとき。

「葉夏」

小野寺允樹がようやく口を開いた。顔を上げて私を見る目は、悲しみで濡れている。

「葉...

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