第94章

その夜、夏川文雄は結局、病院に姿を現した。手には一通の契約書。

株式譲渡契約書だ。

想定どおりだった。

自分だけは牢獄に落ちたくない。私は彼が公金を流用した証拠をがっちり握っている。穴埋めの機会を与えた以上、それは彼にとっての細い命綱でもある。

ようやく目を細めて休めた小野寺礼臣を見て、私は眉をひそめたまま夏川文雄に視線を向ける。

「ちょっと待って。外で話そう」

夏川文雄が口を開く前に、小野寺礼臣がまた目を開けた。夏川文雄を一瞥しただけで用件を察したらしい。

「外は寒い。出なくていい。奥の部屋で話せ」

夏川文雄の笑みがわずかに引きつった。

「どこでも同じです。休まれていると...

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