第12章 私邸

いちばん可笑しかったのは――十年使っていたテレビまで、影も形もなくなっていたことだ。

「……ふん」

冬木澪は鼻で笑い、ガラス片を踏みしめて室内へ入った。ぱち、ぱち、と乾いた音が足元で弾ける。

ダイニングテーブルの上に、紙切れが一枚。半分がペンキに浸されていて、字は殴り書き。なのに悪意だけは、やけに丁寧だった。

【冬木澪、おまえの何がそんなに偉いの?!】

【スープに毒が入ってたのに気づいた? 監視に気づいた? だから何。覚えとけ、また会うから】

【遺産を奪おうなんていい度胸ね。生き地獄を味わわせてやる】

冬木澪は二本の指でそれをつまみ上げ、汚いものでも扱うみたいに、ひらひらと一度...

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