第28章 悪意

冬木澪は唇をわずかに動かし、言い返そうとした。

けれど、藤堂湊の有無を言わせぬ眼差しに射抜かれ、さらに身体の力が抜け切っている現実を突きつけられると、最後には沈黙を選ぶしかなかった。

目を閉じる。――それが、彼女なりの黙認だった。

藤堂湊は、ようやく大人しく横になった彼女を見て胸を撫で下ろす。だが眉間の皺は消えない。

口で止めるだけじゃ一時しのぎだ。回復させるには、根っこを片づけなければならない。

そう判断した瞬間から、藤堂グループの「言ったら最後」の社長は、看病という名の“投下”を開始した。

たとえばその日。

冬木澪が目を閉じたまま横たわっていると、こぽこぽ、と水の音がした。...

ログインして続きを読む