第30章 誕生日を祝う

続いて、橋本日奈はふいに何かを思い出したようだった。

ぱっと瞳を輝かせると、いきなり袖をたくし上げ、藤堂颯太の目の前へ身を寄せる――

手首に残る古い傷痕。醜い皺のように、くしゃりと縮こまっている。

薄暗い灯りの下でも、橋本日奈の声は蜜を溶かしたベルベットみたいに甘かった。ひとつひとつの言葉が、いちばん柔らかな情をまとって落ちてくる。

「颯太兄さん……覚えてる? これ、子どもの頃――颯太兄さんを助けようとして、熱いお湯で火傷したやつ」

「颯太兄さんのためなら……死んだっていいって、ずっと言ってきたでしょ」

「だから、何がいけないの? ほんの少しでも近くにいられるなら……」

彼女の...

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