第34章 即刻解任

冬木澪はペンを握る指を、ほんのかすかに止めた。

書類の余白に描きかけの幾何学模様。線の端に、ごく小さなささくれが生まれる。

だが止まったのは、秒にも満たない一瞬だけだった。

すぐに澪は視線を上げ、高瀬梅子の毒を煮詰めたような目を正面から受け止める。表情は動かない。口も開かない。

ただ静かに見返した。

まるで、理不尽に騒ぐ見知らぬ他人を見るみたいに。あるいは、言葉にせずにこう告げたみたいに。

――それで?

その徹底した無視は、どんな激しい反論よりも鋭く刺さった。

高瀬梅子の笑みが、ぴたりと固まる。怨毒が眼底から滲み出て、今にも形を持って噴き出しそうだった。

「冬木澪、何を気取...

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