第35章 囲い飼い

冬木澪は藤堂湊のすぐ傍らに、黙って立っていた。視線は、強張った彼の横顔――張り詰めた頬の線へ落ちる。

脆い、という言葉。

澪が藤堂湊を知ってから今日まで、その言葉が彼に結びついたことは一度もなかった。

彼はいつだって、鞘から抜かれた刃みたいに鋭い。光を放ち、迷いなく、折れない。

けれど今、澪の目の前にいるのは、家の責任に息を詰めさせられている男だった。

胸の奥に、ほんのかすかな感情が落ちた。深い水底へ小石を投げ込んだみたいに、波紋がひとつ、すうっと広がる。

薄くて、すぐ消える。なのに、確かに残る。

――もしかして、これは。

澪はそう思った。

哀れみ、かもしれない。

藤堂家...

ログインして続きを読む