第46章 薬を盛られた

橋本日奈の顔には、どこか病的な艶めかしさが張りついていた。

手の中で、かつて藤堂颯太を眠らせたのとよく似た、小さな香水瓶をぎゅっと握りしめる。

藤堂湊との距離は、もう指先が届きそうなほど近い。日奈は息を殺し、獲物を狙う毒蛇みたいに、音もなくにじり寄った。

あと二歩。

彼女は、勢いよく腕を振り上げた。

香水瓶の口を、藤堂颯太にやったときと同じように、藤堂湊へ向けて――

だが、藤堂湊の警戒心は常人のそれじゃない。

背後のわずかな気配。鼻先をかすめる異質な匂い。それだけで、反射みたいに察知する。

日奈が手を上げた、その瞬間。

湊は背中に目でもあるみたいに、鋭く身をひねった。

「...

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