第51章 隠しきれない

橋本日奈はバッグのストラップをぎゅっと握りしめ、冬木澪を睨みつけた。落ち着き払ったその表情の奥から、何かをえぐり出そうとするみたいに。声には、抑えきれない震えが混じる。

「……いったい、何が言いたいの!」

「別に」

冬木澪はコーヒーを置いた。

「橋本さんには、昨夜言ったのと同じ。私の色恋を気にするより、まず自分の体を気にしたほうがいい。だって――」

語尾をわざと長く引いて、冬木澪の視線がもう一度、橋本日奈の下腹部をかすめる。薄い笑みは冷たい。

「隠したって、隠しきれないものもあるから」

その言葉が落ちた瞬間、橋本日奈は最後の一本で支えられていた糸をぷつりと切られたみたいに崩れた...

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