第68章 もうこれ以上迷惑をかけるな

朝のダイニングは静まり返っていた。ブラインド越しの陽が、赤いマホガニーのダイニングテーブルにまだらな光と影を落とす。

藤堂家の食卓にいるのは冬木澪ひとりだけ。今日は出社が遅くていい日だ。藤堂湊はもう会社へ出ていて、高瀬梅子も早朝からどこへ行ったのか姿がない。

――と、そのとき。階段のほうから足音がした。

藤堂颯太が、だらしない部屋着姿で降りてくる。目の下には濃い青黒い隈。まともに眠れていないのが一目でわかった。

昨夜、颯太が帰宅したのは深夜だった。運転手の林田さんが「客人が泊まっている」と何気なく口にしただけで、誰が来ているのかまでは聞いていない。

まさか、その“客”が冬木澪だとは...

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