第69章 工場での面会

冬木澪はモニターを見つめたまま、長いこと動けずにいた。

罠だとわかっている。それでも、断れない――

メールの文面が、彼女のいちばん痛いところを正確に突いていたからだ。

沈黙ののち、冬木澪は結局、返信を打ち込む。

【了解。時間どおりに行く】

送信した瞬間になって、ようやく胸の奥の張りが少しだけ緩んだ。背もたれに身を預け、ふう、と息を落とす。こめかみが鈍く痛んで、指先で揉みほぐすようになぞった。

顔でも洗ってこよう。

部屋のドアはきちんと閉まりきっていない。細い隙間が残っていた。

蛇口をひねると、ざあっと水の音が立つ。

そのとき、外から控えめなノックが聞こえた。

「澪?」

...

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