第73章 録音

冬木澪がもう芝居を続ける気もなくなったのか、適当な理由をつけて先に二階へ上がっていった。

橋本日奈は「今だ」とばかりに皿を置き、高瀬梅子へ声を落として言った。

「お話ししたいことがあるんです」

高瀬梅子は面倒くさそうに目を上げる。

「何よ」

「ここに住ませてください」

橋本日奈の声は小さい。けれど、ひとつひとつがはっきりと耳に刺さった。

「私、妊娠してるんです。颯太と一緒の部屋は無理ですから……颯太の隣の部屋、空いてますよね。空き部屋なら問題ないでしょう」

高瀬梅子は冗談でも聞いたみたいに鼻で笑った。

「……何を言ってるの」

「まだ颯太と婚約もしてないのに、住み込むなんて...

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