第87章 何かおかしい

藤堂湊と冬木澪がここ数日、会社を空けているせいか。藤堂グループ総務部の給湯室には、なぜだかいつもコーヒーの香りが漂い始めていた。

藤堂颯太が、うんざりした顔で購買リストの束をファイルキャビネットにねじ込んだ、そのとき。

背後で、かすかな物音がした。

振り向くと、藤堂涼太が紙コップのコーヒーを二つ手に、こちらへ歩いてくるところだった。口元には、いかにも「ちょうどいい」笑みが貼り付いている。

「颯太様、少し休みませんか」

涼太はそのうち一つを差し出した。カップの外側には水滴がびっしりと張りついている。

「淹れたてです。最高級の豆、奮発しました。颯太様、こういうの好きでしょう」

颯太...

ログインして続きを読む