第88章 決裂

「何が変だって?」

藤堂颯太はげっぷをひとつ、酒くさく漏らした。

「涼太さん、いい人じゃん。俺の兄貴より――」

「……あの人、こっちを見る目が調査みたいだった」

橋本日奈が遮る。声は低く、やけに真面目だ。

「それに、あの腕時計。あんたのお母さんのと、まったく同じだった。変だと思わないの?」

藤堂颯太はきょとんとした。そういうところには、どうやら一ミリも気づいていなかったらしい。

眉をしかめる。

「考えすぎだろ。高い時計が同じだからって、何がわかるんだよ」

「たまたまってこともあるしさ」

橋本日奈は、彼の能天気な顔を見て、胸の奥にずしりと無力感が落ちた。

――ほんと、救い...

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