第4章

愛美の視点

錠剤を飲み込み、ベッドに横たわる。薬が効くのを待った。しかし、薬が効き始めても、私の頭の中ではさっきの光景が何度も再生されていた。あの蝋の一滴、焼けるような痛み、そして……恐ろしいほど鮮明な記憶の断片。

睡眠薬で意識は朦朧としてきたけれど、それでも悪夢はやってきた。これまで以上にリアルで、残酷な形で。

キャンパスの奥深く、深夜。私は誰もいない小道を、よろめきながら歩いていた。ハイヒールの音が、ひび割れた石畳に寂しく響く。パーティーが終わるのが遅すぎたのだ。友人たちは皆、とっくに帰ってしまっていた。タクシーを呼ぶべきだった。ちくしょう、なんで一人で歩いてるんだろ、私。

「愛美、待ってくれ……」

振り返ると、見慣れた人影が闇から現れた。大輝だった。でも、その表情はいつもの彼とはまったく違っていた。優しさも、愛情もなく、ただ骨の髄まで凍るような冷たさだけがあった。

「大輝?」私は立ち止まる。胸の中に不吉な予感がこみ上げてきた。「ここで何してるの?」

「君を待っていたんだ」彼の声は低く、危険な響きを帯びていて、いつもの口調とは似ても似つかなかった。「昼間のこと、話がある」

今日の昼間、私たちは喧嘩した。クラスメイトの達巳くんに近づくなと彼が命令したからだ。私は腹を立てて、酷いことを言ってしまった。でも、今の彼の表情を見て、私は怖くなり始めていた。

「大輝、話は明日にしない? 私、疲れてて……」

「いや、今だ」彼は一歩前に出ると、私はとっさに後ずさった。「今日君が言ったことで傷ついた、愛美」

「私……ただ、カッとなっちゃって……」

「カッとなった?」彼は鼻で笑った。「君は僕を束縛魔だと言い、息が詰まると言い、僕に出会ったことを後悔していると言った。それが本心か?」

「違う、そんなつもりじゃ……」

だが、彼はもう聞いていなかった。彼は乱暴に私の腕を掴んだ。その力は痛いほど強い。振りほどこうとしたけれど、彼はあまりに強すぎた。

「僕が束縛魔だと思うなら」彼の声はさらに危険な色を帯びた。「本当の束縛ってやつを見せてやるよ」

そして、すべてが地獄に変わった。

彼は私を地面に突き倒した。ざらついたコンクリートが肌を擦る。ドレスは破れ、膝は鋭い石に打ち付けられ、血が滲み出た。

「やめて! 大輝、やめて!」私は叫びながら、這って逃げようとした。

しかし、彼は私の足首を掴み、引きずり戻した。爪で地面に血の跡を残した。逃れる助けになりそうなものを、何でもいいから掴もうと必死だった。

「お願い……私たち、恋人同士でしょ……愛してるんでしょ?」私は嗚咽し、涙で視界が滲んだ。

「愛?」彼の笑い声は、骨の髄まで凍るように冷たかった。「愛とは完全な所有だ。君が自らそれを差し出さないのなら、僕が奪うまでだ」

痛みが始まった。全身を引き裂くような、千のナイフで切り刻まれるような苦痛。抵抗したかった。叫びたかった。でも、彼の手が私の口を塞いだ。私にできたのは、くぐもった呻き声を上げることだけだった。

「誰にも聞こえやしないさ」彼は私の耳元で囁いた。その声は病的な満足感に満ちていた。「誰も君を助けない。僕だけだ。君の運命を決められるのは、僕だけなんだ」

私の世界は、痛みと恐怖と絶望の地獄になった。かつて心から愛した顔は、今や最も恐ろしい悪夢となり、かつて見惚れたその瞳には、残酷さしか宿っていなかった……。

「いやぁぁぁっ――!」

夜の静寂を引き裂くような悲鳴と共に、私は悪夢から覚めた。

勢いよく身を起こすと、全身が冷たい汗でびっしょりだった。心臓が張り裂けそうなくらい激しく鼓動していた。時計は午前三時を指していた。部屋は暗く、カーテンの隙間から街の微かな光が差し込んでいるだけだった。

腕はまだ鈍く痛んだ。蝋に焼かれた赤い痕が、今夜の出来事がすべて現実だったと思い知らせてくる。

その時、ベッドのそばで何かが動く気配がした。

顔を向けると、ベッド脇の椅子に人影が座っていた。大輝だった。彼は小さなチューブ――火傷の軟膏――を手に持ち、もう片方の手には湯気の立つミルクの入ったカップを持っていた。

「目が覚めたんだね」彼は静かに言った。「君の叫び声が聞こえたから、様子を見に来たんだ。すまない、合鍵を使った。火傷の手当てをしないと……」

彼を見た瞬間、すべての恐怖と怒りが爆発した。この顔――夢の中の、あの残忍な顔と同じ!

「あっちへ行って!」私はヒステリックに叫んだ。「あっちへ! 私に触らないで!」

私は力いっぱい彼を突き飛ばした。不意を突かれた彼は、椅子ごと後ろに倒れた。火傷の軟膏がそこら中に飛び散る。

「愛美、落ち着いて……」彼は起き上がろうとした。

「落ち着いて? よくもそんなこと言えるわね!」私は彼の手からミルクのカップをひったくり、彼に向かって投げつけた。「この変態!くそ野郎!」

カップは彼の胸に直撃し、熱いミルクが彼の上半身に飛び散った。静かな部屋の中で、陶器の割れる音はひときわ鋭く響いた。

大輝はそこに立ち尽くしていた。シャツは濡れて体に張り付き、顔は衝撃と痛みに満ちていた。しかし、彼は怒りもせず、復讐しようともせず――ただ静かに私を見ていた。その瞳に、私には理解できない感情が宿っていた。

「全部思い出したわ!」私は叫んだ。「あなたが私を襲ったこと! あなたの忌々しい顔も! あなたが言った言葉も全部!」

「愛美……」彼は一歩前に出たが、私はすぐに後ずさった。

「近づかないで!」私はベッドサイドのランプを掴んだ。「それ以上近づいたら、あなたの頭を殴りつけるから! もっと早くこうすればよかったんだわ!」

彼は立ち止まり、降参するように両手を上げた。髪がミルクで濡れて額に張り付き、見るからにみすぼらしい。あの高級なシャツも、今はびしょ濡れの塊だ。

「君を傷つけない」彼は静かに言った。「もう二度と、君を傷つけたりしない」

「嘘よ!」私は怒鳴った。「全部嘘! あなたはもう私を傷つけた! 私の人生をめちゃくちゃにしたのよ!」

彼がそこに立っているのを見た。あんなにみすぼらしく、無力な姿を。すると突然、病的な満足感が湧き上がってきた。彼にも少しは痛みを味あわせてやればいい! 苦しめられるのがどんな気分か、思い知らせてやればいい!

「出てって!」私はドアを指さした。声は震えていたが、断固としていた。「今すぐ出てって! 二度とあなたの顔なんか見たくない!」

彼は長い間私を見つめていた。その瞳は痛みと後悔に満ちていた。それから彼は静かに屈んで、ガラスの破片を拾い集めようとした。

「いい人ぶるのはやめて!」私は叫び続けた。「出てって! 出てって! 出てって!」

彼は動きを止め、ゆっくりと立ち上がった。「僕は……客間に行く。何か必要なことがあったら……」

「何もいらない!」私は彼の言葉を遮った。「あなたが消えてくれればそれでいい!」

彼は頷くと、ドアに向かって振り返った。戸口で彼は立ち止まったが、振り返りはしなかった。

「愛美、君が信じようと信じまいと、僕は君を愛している。君を助ける方法を必ず見つける。約束する」

そうして彼は去っていき、静かにドアを閉めた。

彼の足音が遠ざかり、客間のドアが閉まる音が聞こえた。世界は再び静寂を取り戻し、私と散らかったガラスの破片だけが残された。

私はベッドに崩れ落ち、部屋の惨状を見つめながら、これまでにないほどの虚しさを感じていた。怒りが過ぎ去った後には、深い疲労と絶望だけが残っていた。

でも、少なくとも、少なくとも彼にも痛い思いをさせてやった。少なくとも、私は完全に屈服したわけじゃなかった。

私は再び横になり、天井を見つめながら夜明けを待った。外では帝都が眠っているというのに、私にもう眠りは訪れそうになかった。

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