第6章

愛美の視点

「ねえ、大輝?」私はゆっくりとショーケースへ歩み寄る。声は不自然なほどに落ち着いていた。「いつになったら、この全てを終わらせるのに一番いいタイミングが来るんだろうって、ずっと考えてたの」

「愛美、何をしてるんだ?」大輝の目に、ありありと恐怖の色が浮かんだ。「馬鹿な真似はやめろ!」

私は拳でガラスを叩き割り、そこから装飾用のナイフを取り出した。手から血が流れていたが、痛みは感じなかった。ロビーの華美な照明の下で、鋭い刃がきらりと光った。

「馬鹿ですって?」刃を手首に押し当てる。冷たい金属が、かつてないほどの静けさを私にもたらした。「一番馬鹿だったのは、あなたの紡いだ嘘の中で...

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