第6章
新井紬視点
二日後、私は黒いSUVの後部座席に押し込まれた。
窓には濃いスモークが貼られていて、外の景色は窺えない。けれど、車が砂漠の奥深くへと向かっていることは肌で感じられた。外の灼熱に対抗するようにエアコンが効き、エンジンは砂の上を鈍く唸りながら進んでいく。
手首には手錠がかけられていたが、伊藤翔は私がみすぼらしく見えることを望んでいないのは明らかだった。彼は私に真新しい白いワンピースを与え、顔の痣を隠すために誰かに化粧をさせた。
クソっ、またあの男の完璧な道具にされたというわけか。
「忘れるなよ」
助手席から小林颯が振り返った。
「お前の仕事は、伊藤裕太をまと...
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