第3章
理奈の表情が、瞬く間に哀れみを帯びた心配そのもの――そんな仮面へと切り替わった。
「映美、今日はどうしてそんなにピリピリしてるの? そんなに負けるのが怖いわけ?」
「そこまで先にやりたいなら、私の順番を譲ってあげてもいいのよ。お願いだから、学園の聖なる聖遺物を侮辱しないで」
彼女は台座から、そっと手を引いた。その動きを私は見逃さず、胸の確信はさらに硬くなる。
「施しなんていらない」冷たく言い返し、私は真っすぐ台座へ歩み寄った。「自分の順番を確認するだけよ」
理奈はため息まじりに首を振り、まるで聞き分けのない子供をなだめるみたいに優しい口調で言う。「映美、これはただの競技会よ。戦争にでも行くみたいな顔をする必要なんてないわ。それに……」
彼女は水晶の表面で淡く光る金色の徽章を指さし、完璧な笑みを浮かべた。「聖遺物はもう選んだの。先にやるのは私よ」
私は理奈を無視して、球体に手のひらをぴたりと当てた。銀の光がちらつく。第二順。
結果を見つめた瞬間、顔から血の気が引いた。
私が――間違っていた!
理奈は最初から私の疑いを見抜いていたのだ。さっきの小さな手の引きは、ただの餌。私にわざと自分で試させ、完全に黙らせるために誘導しただけ。
けれど、あの几帳面な盗作計画を成立させるには、彼女は私より先に舞台を奪わなくちゃいけない。こんな致命的な部分を、運に任せるはずがない。
この球体は、絶対に細工されている!
でも、どうやって……?
私が次の言葉を吐くより早く、観客席が耳をつんざくようなどよめきに包まれた。
「今日のあいつ、何なんだよ。二番目でいいだろ? 順番で魔法が変わるのか?」
「ほんとそれ! 課題は即興なんだぞ。二番目なら考える時間が増えるだけだろ。言い訳探してるだけじゃん!」
「理奈を見ろよ、落ち着いてて余裕だ。あれが本物のお嬢様とスラム街のドブネズミの差だな。浅田映美は才能はあるかもしれんが、品の欠片もないな」
私は首を振り、毒々しい嘲りを耳の外へ追いやった。意識のすべてを、あの水晶球にねじ込む。
もしこれが、何度やっても私を二番目に固定する装置なら、仕掛けはここにあるはずだ。
私が固まったままでいるのを見て、司会者が近寄り、そっと肩に触れてきた。
「浅田さん、どうしました? 具合が悪いのですか?」彼はマイク越しに、競技場中へ偽物の心配をばらまく。「ほら、もし今日は怖くて出られないというなら、今すぐ棄権の手続きを――」
私は一秒も迷わなかった。司会者を押しのけ、鋭く、見えない精神力の棘を球体の核へ突き立てる。
――掴んだ。
学園紋章の古い共鳴が、まるごと欠け落ちている。代わりに、異物のような精神の糸が絡みつき、遠隔の導管として張り付いていた――投影順の出力を強制的に上書きしている!
私は身を躍らせて球体を掴み、頭上高く掲げた。
そして、点滅するカメラの閃光と、数千の観客の息をのむ気配の中で――それを地面へ叩きつけた。
水晶が、無数の鋭い破片となって砕け散る。
競技場全体に、死んだような、背筋の凍る沈黙が落ちた。
きらめく残骸の中から、粗雑な球形の偽コアがころりと転がり出てくる。漆黒の制御ルーンで幾重にもきつく巻かれたそれは、私の足元でぴたりと止まった。
