第73章

新山晃は、自分の目の前をすり抜けるように通り過ぎた小柄な女を見た。ピンクのデニムワンピに白いキャンバススニーカー。手には某ブランドの最新バッグを持ち、頬のあたりを隠すように当てている。黒いゆる巻きのロングは高い位置でポニーテールにまとめられ――全身から「やましいです」と書いてあるようだった。

それを見て、新山晃の濃い眉がわずかに跳ね上がる。

「止まれ」

星野結花はぴたりと足を止めると、手にしていたバッグを安藤に渡し、そのまま身を屈めて新山晃の胸元へすぽっと潜り込んだ。

「あなた、おかえり!」

新山晃は、へらへらと愛想笑いを浮かべる結花を見下ろし、腕時計に視線を落とす。

「星野結花...

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