第75章

綾野大翔は瞳孔をきゅっと縮め、江川千尋の背中をそのまま見つめていた。

「江川……千尋、なのか」

江川千尋は落ち着いた所作で振り返り、綾野大翔の――何ひとつ変わっていない顔を見た。

「綾野さん」

「お久しぶりです」

綾野大翔はスラックスのポケットに入れた指を、こわばらせた。

……本当に、彼女だ。

江川千尋。

何を言えばいい。

逡巡の末、数年前の出来事が脳裏をよぎり――それでも綾野大翔は、何事もなかったように薄く笑った。

「江川さん。……お久しぶりです」

星野結花は二人を見比べて、ぱちぱちと瞬きをする。

新山晃が手の甲で星野結花の頬を軽く触れた。

「見なくていい。いい子...

ログインして続きを読む