第6章

「どうしてそんなにびしょ濡れなんだ?」

 ずぶ濡れの私を見て、父さんが心配そうに駆け寄ってきた。

「途中で転んじゃって」

 父さんを心配させたくなくて、とっさに嘘をついた。

 父さんは早くシャワーを浴びて着替えるようにと口うるさく言いながら、生姜湯を用意しに台所へ向かった。

 その忙しそうな背中を見つめていると、胸の奥に温かいものがこみ上げてくる。この人は私のために、あまりにも多くのものを捧げてくれた。これ以上、心配をかけるわけにはいかない。

 しかし、熱は容赦なくやってきた。

 小さなアパートで丸二日間、私は昏々と眠り続けた。父さんはうろたえ、絶えず濡れタオルで私の体を冷やし...

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