第6章

【香苗視点】

 老執事の影山に押しつけられた裏帳簿一式を抱え、私はその夜のうちにM区を抜け出した。向かった先は、静けさだけが当たり前にあるS市。

 命綱みたいな財産証明と、思い出せる限りの口座の動き――その全部を、P市で知り合ったハッカー仲間のマックスに預けた。

 一週間。

「新頁」書店のドアベルが、ちりんと鳴った。

「香苗、お前の勘は当たってた」

 マックスは分厚い追跡報告書をレジ台にどさりと放り、険しい顔で続ける。

「あれは仕組まれた罠だ。鈴山の金を本当に抜いたのは喜代美。神盾控股を噛ませて、あの五百万を動かしてお前に罪を着せただけじゃない。ここ三年で、ケイマンの匿名口座に...

ログインして続きを読む