第6章

若菜視点

勇人の誕生日の後の数週間は、どこかぼんやりと過ぎていった。

花子ちゃんはいつも私のそばにいるようになった。毎日、授業が終わると私の手をつかみ、イーゼルの前まで引っ張っていく。学校での出来事を夢中で話しながら。「宮本先生、聞いて! 今日のお昼にね、友達がお菓子とおにぎりを交換しようって言ってきたの。でも、お父さんが特別に作ってくれたから、だめって言ったんだ」どんな些細なことにも、その瞳はきらきらと輝いていた。

夕食の後、三人で散歩することもあった。花子ちゃんが歩道でぴょんぴょん跳ねながら先を行き、健二さんが私の隣を歩く。彼は仕事のこと、花子ちゃんが最近恐竜に夢中なこと、他...

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