第8章
若菜視点
笑い声と小麦粉にまみれた午後が、あっという間に過ぎて三週間が経った。花子はクッキー作りに夢中になり、健二がそのわがままを何でも聞いてあげるものだから、私たちの土曜日は、分別のある大人が許容すべき量をはるかに超えるバターと砂糖にまみれることになった。
「見て、雪だるまのクッキー作ったよ!」花子は、およそ人間には見えないいびつな塊を掲げて見せた。
「素敵よ、花子」私はしゃがみ込んで彼女の作品を褒め、耳にかかった髪を払ってあげた。
健二が台所のアイランドキッチンの向こうで笑った。「クッキーそのものより、自分たちにつけた小麦粉の方が多いんじゃないか」
自分のシャツに目をやる...
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