第6章

翌日の午後二時ごろ、山本涼太は「家族の用事」があると言い残し、近くの喫茶店へ向かった。

私にとって完璧な好機だった。

川崎順平はベッドに寝そべって、SNSを眺めていた。私は昨日彼が買ってくれた黒いシルクのネグリジェを纏い、バスルームから出た。

「順平……」私の声は、彼が今まで聞いたことのないような、低く、妖艶な響きを帯びていた。

彼は顔を上げ、目を見開いた。「杏奈? 君……」

私はゆっくりと歩み寄り、ベッドの端に腰を下ろした。私の手が彼の頬を撫でると、途端に筋肉が強張るのが分かった。

「昨日の夜、あなたが言ったこと、ずっと考えてたの」私は彼の瞳をじっと見つめる。「私たち...

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