第8章

車は人目につかない見晴らしの良い場所に停まった。眼下にはS大学を中心とした街の夜景が瞬いている。山本涼太がエンジンを切ると、静寂の中に私たち二人の荒い息遣いだけが残った。

「君が欲しい」彼は私の方を向き、欲望に燃える目で言った。「杏奈。初めて君を見た瞬間から、ずっと欲しかったんだ。賭けなんて……ただの、近づくための口実だった」

「順平の彼女なのに?」

「順平の彼女だからこそ、だよ」彼の言葉に私は衝撃を受けた。「あいつに君はもったいない。あいつは君のことを、まるで勝ち取ったトロフィーみたいに話す。愛してる人間に対する態度じゃない」

私は目に偽りの涙を浮かべた。「本当に……そんなこと...

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