第8章

宮本利が車で家まで送ってくれる。車内の空気は暖かく、そしてどこか微妙だった。

彼の手はハンドルをしっかりと握り、時折こちらに向けられる視線には複雑な感情が入り混じっている。

「ごめんね、一年経ってもまだ東京で家が買えなくて」

彼は突然、申し訳なさそうに切り出した。

私は彼の横顔に視線をやる。その輪郭は夕日に照らされ、ひときわ固い意志を感じさせた。

「でも安心して。全て良い方向に向かっているから」

彼は言葉を継ぎ、その口調には確固たる自信が滲んでいた。

私は微笑んだ。

「彼女にそんなに良くしてくれるんだもの、成功するのは時間の問題よ」

そう口にしてから、私は彼に...

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