第10章 彼女が初めて彼を殴った

若林詩羽は両手で胸元の裂けた布をぎゅっと握りしめ、睫毛の先に溜まった涙を落とすまいと震える声を絞り出した。

「絃星、あなたが私を嫌ってるのは分かってる。誠言と一辰を奪ったって思ってるんでしょう。でも、私……そんなつもり、一度もなかった。ただ、一辰が可哀想で……少し面倒を見てあげただけなの」

「感謝されなくても仕方ない。でも、こんなふうに辱めることないじゃない……これじゃ、これからどうやって人前に出ればいいの……」

すぐさま、周囲から若林詩羽を庇う声が飛ぶ。

「ほんとよ、鳴海絃星。若林嬢が子どもの面倒を見てくれてたのに、感謝するどころか服まで引き裂くなんて。そりゃ息子だって懐かないわよ...

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