第120章 いっそ駆け落ちするまでだ

この電話を結城栞にかけさせるつもりなど、白鳥縁一には最初からなかった。母親はもともと絃星に良い感情を抱いていない。もし自分の怪我が絃星のせいだと知れたら――あの性格だ。きっと二人を無理やり引き離す。

「……残りたいなら、残ればいい」

白鳥縁一の声には、どうしようもない諦めが滲んでいた。

鳴海絃星が傷つくくらいなら、結城栞をここに置いておくほうがまだマシだ。あとで適当な理由をつけて追い払えばいいだけの話。

白鳥縁一が折れたのを見ると、結城栞は口元をつり上げた。さらに勝ち誇ったように、鳴海絃星へ一瞥をくれる。

――相変わらずだな。

鳴海絃星は心の中で鼻を鳴らした。学生の頃から、何も変...

ログインして続きを読む