第26章 彼は彼女をママと呼ぶ

鳴海絃星は白鳥縁一に付き添われ、馬場の医務室へ向かった。

手綱を握り締めすぎたせいで、掌は皮がむけ、ところどころ赤く擦り剥けている。

ナースがピンセットと消毒液を手に近づき、慎重に傷口の砂や汚れを取り除いていった。

鳴海絃星は痛みに眉をわずかに寄せる。それでも唇を噛み、声は漏らさない。

その様子を見守る白鳥縁一の眉間は、深く険しく寄っていた。まるで彼自身の肉に砂粒が食い込んだかのように。

「痛いなら言え。誰も笑わない」

低い声が、そっと落ちる。

鳴海絃星は首を振り、無理に笑ってみせた。

「これくらい、どうってことないよ」

心が穴だらけになる痛みに比べれば、皮膚の痛みなど取る...

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