第28章 彼女は使用人にも及ばない

鳴海絃星は足を止めたが、振り返らない。

「何かご用ですか、八幡社長」

八幡誠言は声を落とし、不機嫌さを隠しもしなかった。

「俺が行っていいと言ったか?」

鳴海絃星はくすりと笑う。

「脚は私についてるの。歩くかどうか、あなたに決められる筋合いはないわ」

それから、淡々と続けた。

「それに八幡社長。もうすぐ離婚するんだから……」

「まだ俺はサインしてない」

八幡誠言の声が、氷のように冷える。

「なら今のところお前は一辰の母親だ。子どもを放って、外の男と一緒に消える? 恥ってものはないのか」

八幡誠言が鳴海絃星を責め立てるのを聞きながら、白鳥縁一が口端をつり上げた。

「社長...

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