第30章 ママがほしい

翌朝。鳴海絃星は、半分眠ったまま目を覚ました。

無意識に視線が、ベッドの八幡一辰へ向く。

そのとき、身体に掛かっていた薄い毛布が、するりと床へ滑り落ちた。

絃星は一瞬きょとんとしてから、腰を折って毛布を拾い上げる。

――なぜだろう。ふと、八幡誠言の姿が脳裏に浮かんだ。

だが次の瞬間、自分でも可笑しくなった。

八幡誠言が、自分を気にかけるはずがない。

自嘲気味に笑って、毛布をきれいに畳み、脇へ置く。そっと手を伸ばし、一辰の小さな頭を撫でた。

熱は下がっている。寝息も深い。

布団を掛け直し、最後にもう一度だけその顔を見て、絃星は静かに部屋を出た。

廊下へ出たところで、隣室から...

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