第57章 余計なお世話をするな

車がS市に入った頃には、空がうっすら白んでいた。

岩崎深はルームミラー越しに後部座席を見やり、思わず息をのむ。八時間の移動だというのに、うちの社長は一度も姿勢を変えていない。

……すげえ。自分なら腕が死ぬ。

「八幡社長……」岩崎深は声を極限まで落として切り出した。「先に会社へお送りしますか、それとも――」

「先に家だ」

八幡誠言が言い切った、そのとき。

肩に預けられていた頭が、もぞりと動いた。

鳴海絃星が目を開き、ぼんやりと顔を上げる。深い眼差しとぶつかって、彼女は一秒、固まった。

次の瞬間、熱いものに触れたみたいにびくっと跳ね、車のドアへ背中を貼りつけるように身を引く。警戒...

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